その駅の北口には、古い食堂があった。 
たまたま仕事で立ち寄った男が中を覗くと、かなり混んでいるようだった。 
ちょうど腹もすいていたので、彼は食べてみることにした。 
  
壁に汚いメニューが貼ってあり、しかも安い。その横にある別の張り紙には、「ご飯・味噌汁、おかわり自由」とある。 
彼は、なるほどと思い、海老フライ定食を注文した。 
すぐに、ご飯と味噌汁が運ばれてきた。 
  
しかし、かなり待っても海老フライはいっこうに出て来ない。 
しびれを切らした男は、声を上げて奥に叫んだ。 
「すいませ〜ん。海老フライまだですか〜?」―――答えがない。 
もう一度叫んでみた。やはり答えはなかったが、客の一人が黙って奥を指差した。男は、従って厨房らしき場所を覗いた。 
中では、数人の客らしき人々がオカズを作っていた。 
  
  
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