昨日、向井さんの公式サイトで「ドラムス アヒト・イナザワが年内の活動をもってZAZEN BOYSを脱退します」という発表がありました。これを目にした時、本当にビックリしました。「まさか…」と思いました。
ZAZEN BOYSを始めるに当たって、向井さんがまず声を掛けたのがアヒト氏だし、この2人でセッションを繰り返した後に、ベースとギターの2人が決まって始まったバンドだから、そういう意味でもアヒト・イナザワ氏は向井さんの片腕的な存在だと思っていたので、彼の脱退は意外であり、凄くショックでした。
しかし、これは夢ではなく現実なんですよね…。残念ながら、まぎれもない現実なので、ZAZEN BOYSを応援する者として、この脱退を受け止めなければならない。そこで、このショッキングな現実を俺なりにどう受け止めたかを書いてみることにしました。
最初に言っておきたいのは、この脱退に関して一番ショックを受けているのは、向井さん本人だということです。
向井さんにとって、アヒト君のドラムサウンドがいかに重要だったかは、今までの歴史を振り返ればよくわかります。
1995年の夏、向井さんがパニックスマイルとやっていたイベント《チェルシーQ》に出ていたアヒト君を見付けて気に入り、声を掛けてNUMBER GIRLが始まりました。そして、NUMBER GIRL解散後、新しいバンドサウンドを模索するに当たって、最初に声を掛けたのがアヒト・イナザワです。
ZAZEN BOYSは、彼とセッションを繰り返す中から少しずつ形になっていったわけで、向井さんも日記で「ZAZEN BOYSも、曲が出来てきておる。ごろごろと。ナンバーガールで定期的に練習していた感覚ががっつりと戻っておる。どうやったって俺とイナザワのコンビネーションには俺らなりの歴史と気合がある。ぴしゃりばいあんた。どげんしたっちゃそげんなろーもん」(2003/5/8)と書いています。
ZAZEN BOYSとしてライヴ活動を再開してからも、ライヴで「ドラムス、アヒトイナザワ」と言ってから始まる曲があることでも、その重要性はわかります。
今回の脱退に関するコメントでも、向井さんは「約10年間、イナザワとバンドを共にしてきた。俺はイナザワのドラムに心酔し、何度も興奮した」と書いており、これを読んでも向井さんにとってアヒト氏の存在がいかに大きかったかがわかると思います。
そんな向井さんにとって、長年のパートナーであるアヒト氏との訣別が、どんなに辛く淋しいことかは言うまでもありません。
一方で、向井さんが音楽に取り組む姿勢は、まったくもってハンパない。予定調和を嫌い、絶えず高いテンションを保とうとする姿勢はNUMBER GIRL時代のインタビューなどからも窺えますが、その姿勢はZAZEN BOYS始動に当たって更に強まったと思います。
向井さんは、バンドのセルフコピーとして〈法被を着たレッドツェッペリンである〉と言いましたが、その言葉を出した日の日記(2003/6/22)で、レッドツェッペリンのライヴ映像に脱帽しつつ「普通、バンドは長く続ければ緊張感が無くなりなあなあになってしまいがちだが、これらの音楽には馴れ合い・惰性の果ての駄作というものは一切無い」と書き、「俺がまさにやらんとしとることは、ツェッペリンのやってきたロックに非常に近いものである、というかツェッペリンはそれをあそこまでやっとるのだ、ということに気付き不安になった。果たして、これを越えられることが出来ようか。これはまさに挑戦である」と述べ、「世にふたつとない圧倒的なオリジナリティ。俺はそれを目指し、やっていきたいと思う」と宣言しています。
初めてのワンマンライヴがあった日の日記(2003/12/15)に「自由に、やりたいことをする。それが出来る、もしくは出来るためにがんばる。しかしながら、それは必死こいてやらな出来ん」と書いている向井さんの姿勢は、当然参加するメンバーにも求められるわけで、今回のコメントでも「天井突破を目指す俺は「これくらいでいい」にどうしてもなりきれん。それはもう暑苦しいほどバンドメンバーには強要する、テンションのアゲを」と書いています。
俺は、向井さんのこういう姿勢を心から尊敬しています。「なにもここまで」と思う方もいるかと思いますが、俺はこれまでに届けられた2枚のアルバムと1枚のシングル、そしてライヴを見てマジで凄いバンドだと思ったし、ZAZEN BOYSの唯一無比なサウンドは、そういう厳しさがあったからこそ初めて生まれたんだと思っています。
俺は、アヒト氏のドラムサウンドが大好きです。ZAZEN BOYSの結成メンバーにアヒト君がいると発表された時は、マジで嬉しかったし、出来ることならZAZEN BOYSのドラムスはずっとアヒト・イナザワであって欲しかった。
でも、ZAZEN BOYSには、いつまでも刺激を受けられるバンドでいて欲しいんです。そして、向井さんには、いつまでもハンパない姿勢で圧倒的なオリジナリティ溢れる音作りをし続けて欲しいんです。
だから、今回の脱退を、前向きに受け止め、今後も今まで以上に頑張って応援し続けようと思います。
(2004/12/02)
(恐ろしく長い文章になってしまいました。もし、最後まで読んで下さった方がいらっしゃいましたら、どうもありがとうございました)
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