つぐみは、中学で一緒だった友達と三人で、久しぶりに会うことになった。「店、どこにする?」って話になり、決まったのは卒業式の帰りに行った川崎の中華料理屋だった。
加奈も、佐知子も、それぞれ別の高校だったし、その後の進路も違っていたので、この三人で会うのは五年ぶりだった。
駅で待ち合わせ、店に行ってみると、その店はもうなかった。その店だけでなく、辺りは当時とまるで変わっており、似たような背の高いビルが並んでいた。
中華という選択を変えたくなかったので、つぐみたちは、少し歩いて、川沿いにある小さな店に入ることにした。
ひとりずつ違う料理を選び、もう一品は全員一致で水餃子に決めた。
それだけは、あの日と同じだった。あの日は「そう言えば水餃子って、店とかでちゃんと食べたことなくない?」ってことで一致し、試してみたのだ。そして食後に「意外にイケるじゃん」と笑ったことを三人とも覚えていた。
つぐみは、ビールを飲み、加奈や佐知子の話を聞いた。昔から聞き役なのだ。
加奈はカレシの話を、佐知子は職場で不倫している同僚の話を、手振りや顔真似付きで早口にしゃべった。
二人が楽しそうに笑って話すので、つぐみも笑顔をしていたが、ひとつも面白くはなかった。むしろ苦痛だった。
つぐみは思った。どうしてあの頃、こんな二人といつも一緒だったのか。
つぐみは、改めて二人をじっと観察してみた。よくよく見ると、加奈も佐知子も、さかんに笑っているのだが、眼は笑っていないのがわかった。
誰も手を付けない水餃子は、冷め切っていた。
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